【HACCP】【コラム】GAPの視点から考えるHACCP手法について~皆さんの疑問に答えます~

概要

 GAPの取組みは、一言で説明できないほど多くの取組みが入っています。そこで、GAP・ITサポートでは2024年より各分野の専門家の方々とコラボして、コラム連載と無料セミナーを企画することにいたしました。
 第3弾の企画は「HACCP」です。「GAPの視点から考えるHACCP手法について~皆さんの疑問に答えます~」と題して、コラム1回と無料セミナーを企画し、執筆・講師は青森LFC合同会社 代表の石川大悟様にお願いしました。

講師紹介


執筆者・講師:石川 大悟
青森LFC合同会社 代表
 2005年3月、弘前大学大学院教育学研究科修了。その後、2005年から2018年までの13年間、ワダカン株式会社研究開発部に勤務。HACCP・輸出業務・食品表示・商品開発・製造工程管理等、多岐に渡る業務に携わった。ワダカン株式会社を退職後は青森LFC合同会社を立ち上げ、青森県内を中心に中小企業へのHACCP、食品表示、ASIAGAPやJFS規格に関する指導業務を行っている。

日本GAP協会認定ASIAGAP指導員
国際HACCP同盟認定HACCPリード・インストラクター
日本HACCPトレーニングセンター認定HACCP上級コーディネーター
食品安全マネジメント協会認定JFSマスター
米国FSPCA認定PCQI(予防管理適格者)
ペリージョンソン認定FDQI(食品防御適格者)
中級食品表示診断士(食品表示検定協会)

1.はじめに

 青森県を中心に、北海道道南地方や岩手県において「HACCP導入支援」、「JFS規格導入支援」、「食品表示指導」、及びASIAGAP導入支援」等を行っている、青森LFC合同会社の石川と申します。私は「ASIAGAP指導員」の他、「国際HACCP同盟認定HACCPリード・インストラクター」や「食品安全マネジメント協会認定JFSマスター」等の肩書も持ち合わせており、指導実績では「GAP導入支援」よりも「HACCP導入支援」の方が圧倒的に多いという人物です。今回は多くの方が悩んでいると思われる、「GAPの視点から考えるHACCP手法」についてご説明したいと思います。(便宜的に、この先「製造・加工視点でのHACCP手法」は「HACCP手法」、「GAPの視点から考えるHACCP手法」は「リスク管理」と呼ばせていただきます。)

2.製造・加工における「HACCP手法」とGAPにおける「リスク管理」では目的が異なる

 製造・加工視点での「HACCP手法」では、「食品事故を100%近く防ぐ(100%防ぐことはできないので、敢えて100%近くとしてあります)」ことを目的としているのに対し、GAP視点での「リスク管理」は、「食品事故が起こる確率を少しでも下げる」ことを目的としています。農場経営をしながら六次産業に取り組んでおられる方も多いと思いますが、一つの大きな違いに気付くはずです。製造・加工のHACCP手法では高確率で「CCP(必須管理点)」と呼ばれる工程が出てきます。しかしGAPでのリスク管理では、「CCP」となる工程が出てくることは稀です。こういった部分からも「食品事故を100%近く防ぐ」、「食品事故が起こる確率を少しでも下げる」という目的の違いに気付けるのではないかと思います。
 ※ 厚生労働省のHP等では未だに「重要管理点」と記載されておりますが、HACCPの対訳本を読むと、「重要管理点」という表現は正しくない為、私は「必須管理点」と呼んでいます。また最近では、「必須管理点」と訳されている対訳本も多くなっています。

3.「HACCP手法」と「リスク管理」対象範囲が異なる

 「2.製造・加工における「HACCP手法」とGAPにおける「リスク管理」では目的が異なる」の部分でも説明しましたが、製造・加工におけるHACCP手法は、「食品安全」に特化しております。それに対し、GAPでのリスク管理は「適切な農場運営」をベースに「食品安全」の他、「環境保全」、「労働安全」等が含まれます。私が初めてGAPでリスク分析(製造・加工では「危害要因分析」や「ハザード分析」とも言う)を行ったとき(当時は無資格だったので断りましたが、お客様が許してくれなかったんです(笑))、この点については大変悩んだ記憶があります。

4.生物学的危害要因として取り扱う病原性微生物が異なる

 製造・加工でのHACCPでは、生物学的危害要因として「考えられるすべての病原性微生物、及びウイルス」を潜在ハザードとして扱わなければなりませんが、JGAPでは「病原性大腸菌(特に腸管出血性大腸菌)」、「サルモネラ属菌」、「黄色ブドウ球菌」、「エルシニア・エンテロコリチカ(通称:腸炎エルシニア)」、「リステリア・モノサイトゲネス」、「ノロウイルス」の6つが必ずリスク評価する対象となっており、その他の病原性微生物やウイルスは各農場で検討ことになっています。中でも「腸炎エルシニア」や「リステリア・モノサイトゲネス」は、日本の製造・加工におけるHACCPではそれほど重要視されないのに対し、JGAP特定の品目について、必ずリスク評価する対象となっているという違いがあります。また、穀物においては「セレウス菌」もリスク評価の対象になっていますね。
 ASIAGAPの場合、GFSI(世界食品安全イニシアチブ)の承認プログラムであり、海外を視野に入れています。よって、「病原性大腸菌」、「リステリア・モノサイトゲネス」は、必ずリスク評価をすることが要求されております。

5.物理学的危害要因として取り扱う範囲が違う

 製造・加工でのHACCPでは、「概ね直径5 mm以上の硬質異物」を物理学的危害要因の基準(令和3年6月15日厚生労働省通知「食品等事業者団体による衛生管理手引書策定ガイダンス」の一部改正より)としています。食品衛生法では、農産物に対しても「異物の混入がないこと」が要求されておりますので、GAPの場合も「硬質異物」を物理学的危害要因としていることに変わりはありませんが、大きさの基準までは設定されておりません。品質上クレーム対象になるもの(「髪の毛」や「ビニール片」等)も危害要因(品質的危害要因 → 製造加工ではHACCP手法として扱わない)も含まれてきます。

6.本来のGAPの姿とは?

 GAPは「Good Agricultural Practice ⇒ 良い農業の取り組み(適正農業規範)」が基本です。その為、「食品安全」の他、「環境保全」、「労働安全」といった部分まで含まれるんですね。製造・加工におけるHACCP手法では、例として「食品表示法の遵守」で言うと「適切なアレルゲン表示」が含まれる程度であり、品質面は含まれません。品質面まで求めるというのであれば、JFS規格、ISO 22000、FSSC 22000といった、より高いレベルを求める必要が出て参ります。

 今回はここまでとしますので、セミナーをお楽しみに!自信を持って言いますが、私は説明が上手ですよ!

無料セミナーおよび質問投稿の詳細

・日時:2024年12月25日(水) 15:00 ~17:00 
・会場:オンライン開催(Zoom)(申込後「URL」をお送りいたします)
・講師:石川大悟(青森LFC合同会社 代表)
・参加費:無料
・参加条件:特になし
・主催:GAP・ITサポート合同会社

お申込みいただいた方には、録画データのURLをお送りいたします。
当日参加できなくても、セミナーを受講したい方はお申し込みください。

なお、本セミナーでは、事前に質問を受け付けます。
講師に聞きたいこと、確認したいことがありましたら、ぜひ下記ボタンから質問を投稿してください。
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